新聞記事やニュースで見つけた、個人的に気になった会計関係の話題をご紹介します。
監査におけるリモート対応
監査新常態(上)リモート転換 道半ば
クラウド活用/スマホで立ち会い 改ざん検知の技術磨く
2021/1/13 日経新聞朝刊
上記の記事は、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、上場企業の会計監査において「新常態」が広がっているという内容でした。
その「新常態」というのは、従来は監査先の企業に駐在して監査を実施することが当たり前でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために駐在ができなくなったため、全く新しい監査手段を行う必要がでてきたというもので、具体的には下記のようなことが紹介されていました。
- ビデオ会議をつなぎっぱなしにして減損損失について会議をする
- クラウドシステムを通じて資料やデータを共有
- 棚卸し立ち会いをリモートで実施
- 残高確認手続きを電子化
- PDF改ざん検知ツールの導入
- 全社員にデジタル研修実施
など、企業の本業でもコロナ対応は必須でしたが、その企業を監査する側も新しい手法を導入し、必要な監査証明をするために対応に迫られていたという内容でした。
上記に棚卸し立ち会いのリモート実施の紹介がありましたが、これは公認会計士協会が指針を出した「リモートワーク対応第2号「リモート棚卸立会の留意事項」」に則って対応されているものの用です。
私は昨年の前半は監査対応を全くしていなかったため知らなかったのですが、利害関係者の投資判断を確保しつつ感染症拡大防止に向けて、監査という場面でも奔走されていたということを改めて認識する良い機会となりました。
「三現主義」の徹底は難しい
「三現主義」というのは、「現場」に出向いて、「現物」に直接触れ、「現実」をとらえることを重視する考え方のことであり、日本の監査において遵守が貫かれてきたものです。
この考え方自体はホンダやトヨタでも掲げられているものなので、監査特有のものではありませんが、企業を理解する上でこの「三現主義」は非常に重要なものとなります。
現実をしっかり観察することで気がつく問題点や解決策というのは少なくないと個人的にも感じますし、特に会計情報に不正情報がないかどうかを確認する立場である監査法人には、ちょっとした違和感が不備や誤謬の発見につながることもあると思います。
ただ、今回のコロナ禍で「現場」に出向くことが難しくなったため、従来の意味での「三現主義」の徹底は困難となっています。
もちろんこの困難な状態を少しでも是正するために公認会計士協会が「リモートワーク対応」の指針を出しているわけですし、その他対応を企業と協力して実施することで監査結果を担保していることは間違いありません。
内部監査での対応
またコロナ禍におけるリモート対応は、上記で述べてきた外部監査のみならず、内部監査においても必要となってきます。
特に海外子会社を持つ企業では従来のように海外渡航しての監査が難しいため、別の方法を考える必要が出てきています。
記事の中で紹介されていたのは、現地の内部監査サポート会社に利用です。
渡航制限のかかる日本からの担当者派遣ではなく、現地にある内部監査をサポートする会社に依頼し、自分たちに変わって監査項目のチェックをしてもらうそうです。
このサポート会社の多くは会計士や税理士などで構成され、監査法人や委託元の企業から独立した位置づけにあるもので、今までは内部監査部門を自前で持つ余裕のない企業が活用していたみたいですが、今回のコロナ禍において新たな活用の場面が出てきた形のようです。
おそら新型コロナウイルスの感染症拡大が止まったとしてもリモート対応は続くと考えるため、さらなるデジタル化や新手法が確立されることになると思います。
私も最新の情報や手法を理解し、実務上で活用できるようにしたいと思います。