新聞記事やニュースで見つけた、個人的に気になった会計関係の話題をご紹介します。
パナソニックが持ち株会社へ移行
このままでは勝てない パナソニック、持ち株会社化へ
苦闘パナソニック(1)
2020/11/16 日経新聞 電子版
パナソニック、持ち株会社制での新事業体制を発表
2021/2/25 日経新聞 電子版 ビジネス
上記の記事では、パナソニック株式会社が2020年11月13日に発表した、2022年4月からの持ち株会社制移行について、変革に至る経緯と新組織体制について紹介されていました。
津賀社長による改革では思うように成長できなかったパナソニックが、低収益事業の整理と成長軌道への早期復帰を目指すこの変革の内容を見ていきます。
持ち株会社とは?
持株会社(もちかぶがいしゃ)とは、他の株式会社を支配する目的で、その会社の株式を保有する会社を指す。ホールディングカンパニー(英語:holding company)とも呼ぶ。他の株式会社の株式を多数保有することによって、その会社の事業活動の指針を決めることを事業としている会社である。
(Wikipediaより)
一般的には「持ち株会社」という言葉よりも「ホールディングス」という言葉の方がよく聞く言葉ですね。
それ以外にも「グループ」という社名にしている企業もあり、例えば「ソフトバンクグループ」は持ち株会社です。
上述の定義にもありますが、株式を保有している企業の支配、つまり経営に特化するための会社となります。
持ち株会社には、本業を行いながら他社を支配する「事業持ち株会社」と他社の支配を本業とする「純粋持ち株会社」がありますが、今回は「純粋持ち株会社」であることを前提に話を進めます。
持ち株会社のメリット
持ち株会社のメリットには、下記のようなものがあります。
- 効率的なグループ経営が可能
・持ち株会社が多角的にグループ全体を見ることができるため、個別最適ではなく全体最適を意識して経営することがしやすくなる
・戦略を持ち株会社で立て、実行権限を子会社に委任することで意思決定を早くすることができる - それぞれの事業会社に合った労働条件の設定がしやすい
・事業により適切な労働条件は異なることがあるが、事業ごとに法人を分けることで複雑な人事制度にする必要がなくなる - 買収や合併等のM&A実行がしやすい
・事業ごとに法人が分かれているため、事業ごとの売却や買収時の契約が比較的煩雑にならずに済む
上記に派生して他にもメリットとして挙げられる内容もありますが、本質的には上記内容に収まるかと思います。
持ち株会社のデメリット
一方、持ち株会社のデメリットには、下記のようなものがあります。
- 事業会社間の横の連携がしづらくなる
・別法人になることでグループ全体最適が子会社側から見えづらくなり、横横で連携しようという意識が薄れてしまう - 法人維持コストが高くなる
・管理部門のコストが法人ごとに発生するため、事業会社が増えるたびに管理コストが増大する
前述のメリットの裏返しになってしまいますが、意思決定が速いということは多くの情報を収集する前に動き出すということであり、横横の連携は取りづらくなります。
また、1法人に対して必ず存在する管理部門のコストは上がるため、管理業務を専門に行う法人を作って一括管理する等の工夫を行い、法人維持コストの削減が必要となります。
そのため、現状では規模の大きな企業の方が持ち株会社に移管した際のメリットが大きいと考えられます。
持ち株会社化は企業の成長につながるのか
上記で見てきたように、持ち株会社化にはメリットもデメリットも存在します。
特に事業の拡大という点のみを考えた場合は、効率的なグループ経営、M&Aの実行容易性と事業会社間の連携不備、管理コスト増大を天秤にかけて判断することになります。
つまり、持ち株会社による経営管理を事業会社が理解でき、かつ管理コスト以上の効果を得ることができれば企業は成長できることになります。
そのように考えると、事業会社間の利益相反が起きたとしても双方の意識がグループ全体に向かうことができれば、大きな力をロスなくグループの成長のために使うことができそうです。
そんな理想論を実現するためには、よくある事業ごとの評価制度ではなくグループ全体の成績に応じた評価を設計し、個別最適に陥らないための工夫が絶対的に必要になると思います。
視野を広くするべきだと簡単に言いますが、従業員全員が全員その視点を持つことができるわけではないため、そのためのインセンティブがこの持ち株会社化とセットになります。
最終的にはコーポレートガバナンスにつながる
前述しました通り、持ち株会社化を企業の成長につなげるためには持ち株会社によるグループ全体への大きな影響力を確立し、同じ目標に向かって進めるための施策が必要だと私は考えます。
そうなると、ともすれば持ち株会社による独裁化につながってしまう危険性があります。
これは、カリスマ経営者による独自路線の経営が企業成長につながってきたという歴史がある一方、その独裁化により内部分裂した結果空中分解した企業も少なくないという歴史を繰り返すことになりかねません。
企業はゴーイングコンサーン(継続企業の前提)を前提に事業を行うべきであり、そのためにはコーポレートガバナンス(企業統治)は絶対的に必要なものとなります。
経営者の暴走だけでなく事業会社による不正も防止しつつ、グループによる理想的な事業推進を目指すため、このコーポレートガバナンスの徹底が企業成長のカギになることは間違いありません。
他の持ち株会社化する企業も同じですが、パナソニックには松下幸之助さんの理念により制定された「綱領」、「信条」、「7精神」を継承し、より良い未来のために生まれ変わってほしいと応援しています。